おおたか清流の「悲しくてやりきれない」


お気に入りのボタンの手が滑って、突然、曲が流れた。
おおたか清流の歌う「悲しくてやりきれない」
数ヶ月前にお気に入り登録してたものだ。
彼女の高音で淡々と歌うスタイルが好きだけど、
前は「花」のほうが好きだった。
希望があるからね。いつの日か花を咲かそうよ、ってね。


絶望が腐れ縁みたいになってしまって、
それを自覚した時から、逆転した。
最早、いつの日か〜とか、そりゃ思うけど、
そこにリアリティーが失せてしまってから。
そんな日、来るのかねえ・・・来ればいいけどさ、とか。
「悲しくて〜」のほうは、今までは、
余りにも救いが無さすぎるなー、と。


一番二番の歌詞はまだ、普通に歌になるくらいなもんなんだけど、
三番になると、


深い森のみどりに抱かれ
今日も風の唄にしみじみ嘆く
悲しくて悲しくて
とてもやりきれない
この燃えたぎる苦しさは
明日も続くのか


って、こんなの・・・ありかよ!
しみじみ嘆く、とか、苦しさが、燃えたぎっちゃってるんだぜ・・・。
最後の最後に、「明日も続くのか」って言って終わっちゃう!
しかも、なんでこの人がそんなに苦しいのかなんてことは
歌詞の中に全然無い。
こんなの、歌にしていいの?こんなの、歌になるの?
なってるし・・・・しかもとてつもなく美しいんだけど。


フォーク・クルセダーズのオリジナルを始め、
色んな人がカヴァーしてるんだけど、
どれも、淡々と歌ってる。
矢野顕子なんかだと、もう、あっかるく歌っちゃってる。
そりゃ、こんなもん、
石川さゆりみたいに情念込められたら聞くに堪えないもんになっちゃいそうだし、
さだまさしみたいに力なく歌われたら魂抜かれちゃうよ・・・。


まるで人ごとみたいに淡々と。
でも、ひとつひとつの言葉ははっきりと、丁寧に。
突き放してもいないし、引き寄せてもいない。


肯定するってこういうことなのかなーと。
苦しいのは、嫌だ、でも、逃れられない。
希望なんて、持てない。
何もかが、
いいわけとかなぐさめとかきれいごととしか思えない。
そんな時に、響く歌が、ちゃんとある。