ツレがうつになりまして を観た:1

ツレがうつになりまして」を観た。
なっかなかヨカッタ。
ふうっと、チカラがぬけた。
色んな場面で泣けた。
とりあえず、以下は、予告編のCMを見た時点で勝手に書いていた感想。
見てないくせに、けっこういいとこついてる。(笑)
見たら、予想してたよりまた良かったのだけど。
原作をブログだというのは勘違いです。



これはネットのブログだったってことで、ちょっと見た記憶がある。

「この病気ばかりはお話にならないなあ」とよく思ったものだけど、なるほど、家族のお話にはなるわけだ。

何しろ他の病気とは違って本人が全然病人に見えず、身近にいる人でさえ感情移入ができないんだからお話になりようがない。医者目線にしたとしても、手術のようなドラマチックな盛り上がりも無いし、うまく描くことができたとしてもただただ、「お医者さん、大変だなー」ということになってしまうんじゃないかな。

そもそも、うつのひと本人が書いたブログってのは正直読めたものじゃない。このブログが突出したのは家族目線だったからなんだろう。

そして、まあ、このわけのわからない面倒な病気になってしまった「ツレ」と一緒にいるだけでもろくでもない大変さなのに、それを文章にして書き綴ったこの原作者は凄いなあ、愛だなあ、と思う。

うつの病人に対しては逃げ腰、心配しすぎ、さらには攻撃的になってしまうことさえままある。その気持ちはとてもよくわかる。

あの病気のつらさは本人だけにしかわかりようが無い、他者には想像することさえ困難だ。つまり、「共感」をテーマにしようとすることが無理なんだな。

うつ病は家族の病だ。例え仕事のストレスが引き金になったとしても、他のどんな要因があったとしても、家族の病だ。

自分の生まれ育った家族と、また、それの投影のもとにできている新しい家族、その両方が病んでいる。たまたまその家族の一員がこの病気の症状を負うことになってしまったに過ぎない。

うつに限らず、統合失調症などを抱えている人と話していてよく思うけれど、本人はごくごく普通かまたはかなり極端に激しいか優しいか、色々ある。色々あるってことはつまり、別に特別な特性があると限ったことでは無いってことで。

ところが、「へ?何だその親・・・・ありえないだろ?」「何その兄弟、わけわからない」という話がかなりあるんだなー。

そして、その家族の極端さを、”病気になった当人を含んだ全員”が加担して増長させている状況がある。

その破綻が表面化したのものがこうした病気そのものなのだ。

CMで流れている場面が良くできている。

「こんなんじゃ死ねないよ・・・」

そうそう、マヌケな病気なんだな、これが。

マヌケなのに本人が本気に深刻なもんだから、そりゃ、家族はイラつくわけさ。まさかそのマヌケが家族全員の深刻な問題だなんて思いも寄らない。

「なんて面倒な病気なのさ」

本当にね。

カウンセリングさえまともにできない医療状況だ。家族カウンセリングなんて夢のまた夢。そもそも、家族カウンセリングにみんなで参加する家族ならもう、カウンセリングなんて必要無いようなものだったりする。

このテーマで映画ができて、しかも宮崎あおい堺雅人って出来過ぎなくらいのキャスト。それだけでも凄い、凄い、って私は思う。

家族の病は愛と笑いが無ければ不治の病。

こじれれば家族崩壊と自殺以外に結末の無い悲惨。

うまく乗りきれるなら、先祖代々から続いてきた呪いが一気に溶けてしまう希望そのもの。

まあ、この映画観てないし!

観るかどうかわかんないけど。

そこらへんのところがなんとなく感じられるものだったらいいなー、と

そんなふうに思っています。

とりあえず、私はもう、自分はあまりにもこの病気との付き合いが長すぎて、うつ病なんだかどうかさえわからなくなってるんだけど、大切なことに気がついた。
抑うつ状態にあると、どうしても自分の本当の姿はこっちで、もう二度と立ち直れないと思い込むのだが。
これをハルさんの素直な視点で見せてくれるので、それが「?」って感じなのがよーくわかる。
ずっと普通にできていたことさえ、もう二度とできないような気がする、のだけど、「そんなわけないだろ?」という声が聞こえる。


私は、なんだかもう、仕事なんか二度とできないような気分になっちゃうのだけど、「そんなわけないだろ?」
別に、ものすごくがんばらなきゃできないようなことをやっていたわけじゃない。
そりゃ、大変なことだってあるけど、ごく普通にできていた、それは思い込みなんかじゃなくて現実だ。
今はできないだけ。
やんなっちゃうけど、今はできないだけ。


自分を俯瞰する視点を自分の中に取り込むことはとても難しいのだけど、この、ハルさんの視点を自分の中に大切に持っていようと思った。
自分では「最低だ」なんだけど、ハルさんは言う、「変なの・・・」
心の風邪っていうけど、風邪にしちゃわけがわからなすぎる。まるで宇宙から来たみたいだ。宇宙風邪だ。」
こんな、愛ある距離感での観察ができるといいなあと、思うのだ。


そんなわけで、ふうっと、チカラが抜けたのだった。


いや、なかなか、凄いよこれは。